【不動産営業】お客様は何を見る?ヒアリングと信頼関係

マンション購入または売却を検討される場合、担当する営業マンに対して警戒心をお持ちのお客様もいらっしゃるかと思います。高級マンションであればあるほど、慎重になるのも当然です。今回は、そんなお客様との「信頼関係」を築くため、ヒアリング時に私が重視していることについてお話しいたします。

高級マンションを売り買いするお客様とは

よくサービス業では「お客様の心のドアをいかに開くか」といった課題があるかと思いますが、私の経験上、お客様には大きく分けて2つのタイプの方がいらっしゃると考えています。

まず、自分のことや要望を積極的に話してくれるお客様。そして、基本的に「どうぞ、あなた(営業担当者)がお話ししてください」というスタンスのお客様です。

どちらが良い悪いということではありません。結論を言ってしまえば、どんなお客様であっても、信頼関係を結ぶことができる営業マンになるべきなのです

営業マンからすると「話しやすい」「提案しやすい」と感じるのは、前者のようなお客様かもしれませんね。たしかに、反応が分かりやすかったり、お客様自らが話をしてくれる場合は、雰囲気良く過ごせるかと思います。しかし、お客様のペースに合わせすぎたり、雑談が多くなってしまったことにより、肝心な点をヒアリングできていなかったり、重要事項を伝え忘れたということがあっては大問題です

一方、後者のようなお客様は「反応が掴みにくい」「提案しにくい」と感じてしまうこともあるかもしれませんが、そもそも高級マンションの相談に来られるお客様には、経営者や会社役員、士業関係者など、経験や知識が豊富な方も多くいらっしゃいます。我々のような(特に若手)営業マンに対し、「この人に任せて大丈夫だろうか…」と警戒することは自然でしょう。

人生にとって大事な資産形成ですから、「そのお客様にとって、安心感のある営業マンになるべき」だと私は思います。

新規のお客様へのヒアリング、心を掴めるか

初めて来店されるお客様には、初めて購入・売却を検討される方だけでなく、不動産関係者等で営業マンよりも知識や経験をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、どんなお客様相手でも「プロ意識」は持つべきです。私は、来店いただいたお客様に心を開いていただけるよう、常に次のようなことを心掛けています。

自分のプレゼンができているか

まずは、どんなお客様とも「対等な関係」を築くことです。ここで言う対等とは、「この人であれば色々と(事情を)話してもいいかも」とお客様に思われることです。このような信用できるかできないかは、会ってほんの数分で判断されてしまうこともあるでしょう。

営業マンにとって、お客様に信用していただくための最初の武器は「自己紹介」と「会社の紹介」です。新規のお客様には、この2つを必ずお話します。こうした自分(会社)の話は、ある意味プレゼンテーションです。お客様は、営業マンの話し方や所作、説明の仕方や話の長さ、雰囲気などから、どんな人かを判断するでしょう。

自分(会社)に関する説明なので一見簡単そうに思えるかもしれませんが、お客様や空気感によっては、全く説明ができそうにない…という場合もあるかもしれません。そんな状況があると理解しているからこそ、最初の印象をポジティブなものにしてヒアリングに進められるよう、日頃から接客の練習をしています。

どこまでプライベートを知れるか

私はお客様とのヒアリングの中で、「会話了解」「相談了解」といった自分の指標を持っています。いくら積極的にお話してくれるようなお客様であっても、会話はしても相談まではしないという方もいらっしゃいます。

会話から相談へ段階を上げるためには、「表面上の条件」に問題や感情といった「プライベート」が加わることが必要です。というのも、駅から近い、価格帯がいくら、エリアはどこで、といった物件的条件の裏には、プライベート的理由(本質的な問題と感情)があるからです。

たとえば、「来年結婚するので、夫婦の職場の間に家を構えたい」「子どもが小学生になるので住み替えをしたい」といった家庭環境や、「出勤時間が早いので、駅チカを希望」「休日は職場の人と過ごすことが多いのでこのエリア」といった、お客様の「生活スタイル」をヒアリングすることが重要です。

モチベーションをあげられているか

お客様の条件に合致した物件をご提案したとしても、すぐに「じゃあこの物件にします」とはならないでしょう。不動産のように、「大金を払う」「資産を売却する」といった行動の裏には、強い動機が必要です。

私は、「妥協したくない」「本当にこの物件でいいのか…」そんなお客様の自然な気持ちに対して、少しだけ「モチベーション」をあげられるようなトークをすることを心掛けています。

特に購入の場合、実際にそのマンションに住むイメージを「良いイメージ」にすることで、マンション購入・売却といった行動が明るいものになります。「便利」「楽しめそう」「安心できる」など、これからお客様がそのマンションで送る「生活スタイル」を良いものにするお手伝いができるようなご提案をしています。

相手は「不動産」ではなく「お客様」

不動産仲介業者は、もちろん不動産を対象としています。しかし、いくら近年のマーケット動向や担当物件について専門的な知識があっても、結局大事なのはお客様との「信頼関係」です。

ヒアリングを進めることは、目の前にいるお客様のことを段々と知っていくことと同じです。表面的な条件をヒアリングすることはもちろんですが、そうした条件を並べるのには必ず理由があります。「なぜこのエリアを希望しているのか」「なぜ今、売却したいのか」などは、お客様とのトークからしか得られない情報です。

そういった意味で、お客様の「生活スタイル」に興味があるというのは、ある意味営業マンに向いているかもしれません。お客様が何を求めているのか、何を提案したいのかを目的としたヒアリングをすれば、物件の探し方や売却の仕方などは広がっていくと私は考えています。

「自分を理解してくれる営業マン=不動産に関する親友」といった関係になれるよう、これからもご提案させていただきます。

高田一洋

福井県あわら市出身。金沢大学工学部(機能機械工学科)を卒業後、大手コンサルティング会社を経て、志を実現するために当時取引先のリストグループへ入社。大手不動産会社10数社の内定を断り、リストグループの魅力に惹かれて入社を決意。