今回は、不動産売買の仕組みを踏まえながら、『不動産業界の裏側』のお話をしたいと思います。
この知識が、今後の不動産取引にお役立ていただければ幸いです。
日本の不動産業界の問題点
この10年でのインターネット広告媒体(suumo、at home等)普及により、消費者がほぼすべての物件を、
自分で探せるようになってきました。しかしながら、インターネット公開された物件以外に未公開物件が
存在していたり、水面下で不動産業者間での売買取引が行われていたり、
不動産関係者以外の消費者は、成約状況などまで把握できていなかったりするのが現状です。
不動産会社と一個人の情報格差は、昔とあまり変わらないと、私は考えています。
そのため、不動産取引の際には、
専門家としての不動産業者・担当者を信頼し、任せることが必要となってきますが、
「どの不動産会社・どの担当者に任せるのか、どういった内容で依頼するのか」はお客様の
ご判断となります。その判断に際して、正しい知識と判断基準を持つことは、
個人として不動産取引を成功させるためにとても重要です。
不動産仲介の仕組み
まず、不動産仲介とは、不動産の売買・賃貸の際に、買主・売主もしくは貸主・借主の「間」に立ち、
売買契約や賃貸契約を成立させることを言います。一般的には、不動産売買や賃貸が成約をした場合、
成功報酬として不動産仲介業者に仲介手数料・事務手数料を支払います。
【潜むリスクとそのカラクリ】
一括査定
一括査定とは、不動産査定サイト(HOME4U、イエイ、すまいValue、イエウール、リビンマッチ等)
などから不動産の売却査定依頼をすると、複数の不動産会社から査定結果が届くというものです。
会社によって査定価格は様々であり、物件にもよりますが何千万円もの差が生じることもあります。
査定価格を適正価格よりも高く見積もることで売却を任せてもらおうとする会社もあります
ので注意が必要です。適正価格よりも高い販売価格で売り出しても問い合わせが少なく売れ
残ってしまったり、最終的に相場価格まで下げることになったり、安く買い取ることを提案
してきたりする会社もありますので、査定価格が高ければいいというものではありません。
※不動産会社としては、専任物件で反響が取れれば嬉しいのです。また、しっかりフォローして金額が適正になれば売れるので、媒介物件はたくさんあった方が嬉しいのです。
両手取引と片手取引
不動産仲介会社の依頼人には、不動産物件を「売りたい人(売主様)」と「買いたい人(買主様)」がいます。
両者の取引様態として「両手取引」と「片手取引」の2パターンが存在し、
両手仲介とは、A社が預かった物件を、A社のお客様に売る場合
(つまり、仲介手数料を売主・買主の両者から受け取る場合)、
片手取引とは、A社が預かった物件を、B社のお客様に売る場合
(つまり、仲介手数料を売主のみからもらう場合)をいいます。
ここで「両手取引」の弊害が生じるのです。
「両手仲介」なら仲介手数料が2倍になるのですから、
売主様から売却の依頼を受けた不動産会社は、できるだけ買主様を自社で探そうとします。
そのため次のような弊害が生じる可能性があります。
●他社に買主を見つけられては困るので、物件情報を公開しない。
⇒ 情報の囲い込み。
●自社の見つけた買主を優先する。
⇒ 他社でもっと高い金額で購入する買主がいても、売主に伝えない。
●価格を下げて安く売る。
⇒ 2倍の仲介手数料が入るので、価格を下げて両手取引にしようとする。
このように、不動産会社が「両手仲介」にこだわると、
高く売れる機会も、早く売れる機会を失ってしまう恐れがあるのです。
残念ながら、「両手仲介」にこだわる不動産業者が少なくないので、注意が必要です。
仲介手数料半額や無料
売却の際に「半額あるいは無料で請け負います!」と宣伝している不動産会社が稀にありますが、
デメリットを認知しておく必要があります。まず仲介手数料が無料ということは、そもそも会社の経営が
成り立ちません。すべての株式会社は営利を目的に運営されています。つまり売上を上げる場所は
買主側からの仲介手数料であり、「両手仲介」をすることで成り立つことになります。
仲介手数料無料の会社は、必ず両手仲介に持ち込まないと利益が全く無いということに
なってしまいますので、自社で買主様を探すことが絶対条件です。
そのため自社で買主様を見つけるために、一切、他の不動産会社に情報を流さず、
問合せがあっても「商談が進んでいます」と答えてシャットアウトします。
インターネット広告を中心に、売却活動は行いますが、少ない自社のお客さんに対して
電話やメールで購入を打診したり、狭いエリアに物件チラシをまいたりするぐらいで、
不動産業界の最大の販売チャネルである「レインズ」※不動産データベース※を使った、
強力な販売ネットワークを活用しないで活動を進めます。
その結果、なかなか売れず、ジリジリと売却設定価格は下がり、本来、きちんと売却活動すれば
売れるはずだった金額よりも低い値段で成約することになってしまう可能性があります。
売主からすると、仲介手数料が無料というのは大きなメリットのように見えます。
しかし、説明したように、結果的には無料になった仲介手数料分以上に、
成約金額が下がってしまうケースが多いように思います。※所有されている物件によります。
安易に仲介手数料無料に飛びつかないようお気をつけください。
不動産仲介というものはこのようなカラクリの上に成り立っています。
だからといってそれぞれの会社の裏事情まで見極めることは難しいですが、
この知識を念頭に置きながら、真摯に向き合ってくれる、信頼できる会社を探すことが大事です。
目の前の担当者が信頼に足る人物なのか、これがとても大切です。実力のある人ほど、早期に昇進昇格して
現場を離れてしまいますし、会社・支店の伝達命令系統は絶対の会社もまだまだ存在します。
この人なら!と思える人と出会えると、不動産売却は成功します。